サックス「ラ♯・シ♭」のフィンガリング
サックス「ラ♯、シ♭」のフィンガリング(運指)は5種類あります。その他に変え指やオーバートーンなどの組み合わせで類似音を探すことができます。選択するフィンガリングによって、音色の明暗、音程、音圧が異なります。スケールや楽曲のキー、テンポ、隣接する音によって適切なフィンガリングを選択します。
優先的に使用する2種類のフィンガリング
- 左側[P]フィンガリングは、最も使用頻度が高いフィンガリングです。[1]+[P]2つのキーを左手の人差し指で同時に押さえます。
- 右側[Ta]フィンガリングは、左手[1]+[2]、右手・人差し指付け根で[Ta]を押さえます。[Ta]トリル・Aキーの略です。「Bbトリルキー」「Side B♭レバー」「SIde B♭キー」など別名で呼ぶこともあります。
楽譜参考例1
単音の「ラ♯・シ♭」やフラット系のスケールには、[P]フィンガリングを使用します。
楽譜2段目のように、半音「ラ♯←→シ」が隣接する場合には、基本的に[Ta]フィンガリングを使用します。[P]を使用する場合には、人差し指を上下スライドさせる必要があります。スライドさせながら吹くことはできますが、アップテンポのフレーズ対応が難しいです。スラーで演奏する場合には、指の開閉スピードが遅いと音の繋がりに影響が出ます。
Donna Leeのフレーズ。半音で隣接する「ラ♯←→シ」は[Ta]を使用します。[P]でも吹けますが、アップテンポでシャープに演奏するのは難しいです。
3種類の替え指
サックスは、右手で「4」「5」「6」を押すと「Pキー」が連携して閉じます。楽器の構造上、2つ分のキーが多く閉じますので、[P]や[Ta]フィンガリングよりも音色が暗くなります。
音を長く伸ばす時には、隣接音との音色の繋がりが悪くなる為、変え指は使用しません。アップテンポのフレーズや装飾音符の時には積極的に使用します。
楽譜参考例2
1段目は、B Major Scaleの3度・平行音階パターンです。[P]と[Ta]フィンガリングの使い分けです。
2段目は、BM7のコード分散です。変え指フィンガリング[5]を使用することで「ファ♯←→ラ♯」のフィンガリングがスムーズになります。「ファ♯←→ラ♯」を[Ta]フィンガリングで演奏できますが、アップテンポの場合には、変え指[5]の方が指が早く動きます。
オーバートーン
最低音B♭フィンガリングを使用したオーバートーン。第2倍音、第4倍音、第8倍音に「シ♭・ラ♯」が含まれています。全てのトーンホールを閉じて音を出しますので、最もダークで強い音圧の音がベルから響きます。主にレッスンの基礎トレーニングで使用しますが、アドリブフレーズで応用することも可能です。
その他の替え指バリエーション
正式なフィンガリングではありませんが、類似音が出ます。現代的なジャズサックス奏法などで、意図的にチューニングを外したクオータートーンフレーズ(半音と半音の間)を吹く時などに使います。アドリブフレーズなどにオルタネイト・フィンガリングを混ぜて独自のキャラクターを付加します。
3と4は、チューニングが高めに当たります。類似音の組み合わせでディチューン効果を出します。
5は、B♭の第二倍音の出しかたのコツがつかめない場合、[3]Gキーを開けると簡単に音が出るようになります。
複数フィンガリングの使い分け
初心者の場合には、シンプルに「優先的に使用する2つのフィンガリング」をMajorとMinor Scaleに紐付けて練習します。Interval(音程)で平行音階やコード分散などの練習を取り入れると、一つのキーの中でもフィンガリングを使い分けないと効率が悪いことに気づきます。楽曲でも同じです。
一種類だけのフィンガリングに限定しないで、複数の選択を試してみることが大切です。経験を積むことで無意識にフィンガリングを選択できるようになります。