アンブシュア(Embouchure)
アンブシュアとは、管楽器を演奏する時の口の形、状態(唇、顎、舌、歯、筋肉など)のことです。サックスのアンブシュアは、大まかに3種類に分かれています。唇の向きなどに奏法の特徴があります。
- シングルリップ(シンリップ)
- ダブルリップ
- リップアウト(ファットリップ)
シングル・リップ(Single Lip)
吹奏楽やクラシック・サックス、クラリネット奏法で一般的なアンブシュア。上の歯をマウスピースに固定、下唇で下の歯を巻き込み被せます。シングル・リップ奏法のことを、シン・リップ(Thin Lip)と呼ぶこともあります。Thin=薄いの意味。
ダブル・リップ(Double Lip)
リードやマウスピース上部に歯が触れないように、下唇と上唇の両方とも歯を巻き込みます。オーボエやファゴットの演奏に使用されるアンブシュアですが、サックス演奏にも使用します。口腔内が縦方向に広がるため、裏声のような響豊かなサウンドが得られます。
リップ・アウト(ファット・リップ Fat Lip)
ジャズ・サックス奏者に好まれるアンブシュア。下唇を巻き込まずに口笛やリコーダーを吹く時のように唇全体を前方に出します。上の歯をマウスピースに固定する吹き方、固定しない吹き方、上の歯をダブル・リップのように巻き込む吹き方などのバリエーションが考えられます。
「ファット・リップ」という表現は日本独自で広まったようで、海外のジャズサックス奏者にレッスンを受けた時には「リップ・アウト」と教わりました。Fat=太いの意味。
どのアンブシュアでレッスンしますか?
吹奏楽団に所属しているやクラシック・サックス専攻の学生さんの場合には、シングルリップ奏法でレッスンします。シングルリップ奏法の場合、アンブシュアに力が入ると下唇を歯で傷つけてしまいます。アンブシュアを修正しないと、下の歯に紙などを巻かないと楽器が吹けなくなったり、マウスピース上部が歯形で削れてしまう方もいます。
ジャズ・サックスの方は、レッスン方針の相談で決めています。基本的にはリップアウト(ファットリップ)でレッスンしますが、奏法が安定しない場合にはシングルリップを試すこともあります。リップアウトは下唇が傷つきませんので、長時間演奏することが可能です。指導経験上、初心者はリップアウトで吹けるようになるのが早いです。クラシック奏法の経験者(私もそうです)の場合には、アンブシュアの力みが完全に抜けるまでに時間がかかります。
リップインとリップアウトの両立は難易度が高いですが、曲調やジャンルに合わせて奏法を組み合わせることもあります。普段使用しないアンブシュアを試すことでアンブシュアが柔軟になり音色コントロールの幅が広がります。
一人ずつ唇の厚さや形が異なりますので、アンブシュアの外観だけでなく実際にレッスンで音を聞いてからでないとアドバイスはできません。先ずは色々と試してみて下さい。
(自力で描いたアンブシュアのイラストですので、細かい部分についてはご容赦ください)